『ミモザの日』ポンポン

ミモザ(マメ科アカシア属とミモザ属)は、春になると黄色で丸い花が集まって咲く、春の到来を予感させる花の一つです。イタリアでは『ミモザの日』と呼ばれる、黄色のポンポンをつけたミモザの花を贈る習慣があるそうです。愛と幸福を呼ぶとされることからミモザの花を愛する人へ贈るのでしょう。そんなミモザの花を象ったポンポンづくりに、立体的な混色技法を用いました。

色ふ「山吹色に向かう黄色」

タッセルは糸を束ねてたらす「線」的な色彩表現になりますが、玉房は糸が球形に広がった糸を刈り込むため「点」の集まった表現です。点が織りなす色彩も美しいのですが、混色による知覚は平均化されてしまいます。むしろ単色のほうが知覚しやすい場合もあるわけですが、玉房の輪郭が単純な球形ゆえに、立体的な表現に物足りなさを感じることがあるのです。そこで、糸色の巻き方を立体的に捉えた混色表現方法を用いて、色が美しく交じり合う様を表現しました。一般的なポンポンの巻き方では表現しにくい、色から色へと移り変わるトランジッション配色です。美しいいろどりをして映えることを「色ふ」(いろう)と表すそうです。

トランジッションカラー

「色」に力点を置くタッセルは「記憶色」という印象の捉え方をします。自然の色というものは実に深い色合いによってシンプルに見せているものです。花をモチーフにすると、記憶を辿ってそう思える見せ方が重要です。

「ミモザ」は、色彩やエレメントだけに意味があるだけではなく、フォルム全体にも「花をかたどった」エッセンスを行き渡らせています。「黄色」は少しの配色の狂いで印象が大きく変わるもので、“山吹色に向かう黄色”というカラーコンセプトは、これから春になる黄色、最も美しく抜けのある黄色の発色を心がけたものです。

また、ウール100%を使用していますが、ウールは、毛糸玉のときの発色の印象と巻いたときの発色が違った印象をもつ難しい糸です。ウール糸の中でも特に透明感のあるものを選んでいます。