和紙にタッセルを漉き込む

【漉き込み】という紙漉の技法

和紙を漉くときに模様を漉き込むことを「漉き込み」といいます。繊維辺や色紙、金箔(金砂子)や、樹皮、押し花やドライフラワー等を漉き込んだものまであります。純楮繊維を原料にした手漉きによる「タッセル短冊」をつくりました。

イメージどおりにはいかない漉き込み

盛り上がった物体を漉き込む場合には、大型の簀桁を用いるほうが良いそうで、最初はセオリーどおりの漉き込みを行いました。最初に漉き込んだタッセルは、麻の荷造り紐で束ねたものでした。最初は簀桁である程度の漉きを行ってから、タッセルをのせて、上から薄く溶いた楮繊維をかけて漉き合わせたのですが、結果は失敗でした。漉いた上に乗せるという段階で、紙との一体感がないことや、漉き込んだ部分が盛り上がりすぎて、異物が入っているような状態です。さらに、漉き終えて脱水する際に、裏返して脱水するのですが、この段階で漉き込んだ盛り上がりが、埋もれてしまう結果となってしまいました。おまけに、麻糸の染料が溶けてにじみだしてしまう始末!!

再チャレンジ

混ぜ物は浮力で浮いてくるため、タッセルを漉き舟に付け少し水分を含ませ浮力がでないようにしました。簀桁に乗せて漉き舟に入れても、乗せたタッセルは浮き上がってくるので、ある程度の、原料繊維で定着しておいてから、一回だけ簀桁全体をゆっくり慎重にくぐらせただけです。できる限り漉き残しがないよう、うっすら楮のベールがかかったような漉き終わりで上げ、脱水は、簀桁の簀ごと取り上げて、そのまま剥離せず、簀ごとバキューム脱水することにしました。最初の失敗を踏まえて、漉き込み感をバキューム時に失わないようにしたことで、むしろ形や細部のディテールがバキュームによって明瞭になったことや、簀のディテールが浮き上がってきました。乾燥は、慎重に剥がして真直ぐ自然乾燥です。

Tassel N

思いつきで作ったタッセルですが、狙ったものより良かったのではないかと思うくらい、使った素材と楮の色がうまく合いました。実際には、漉き込みに集中してタッセルの配置や房の広がり、コードの配置等、気がついたところは、なんとか仕込んでみましたが、正直たまたま上手く漉き込めたというところです。素材も自然素材の方が合いやすいことや、浮き上がる!色が出る!等、いろいろな問題と出会って勉強になりました。