パスマントリーと飾り房

タッセルの多くは古典的な手法で作られており、それら装飾手法の背景にあるのが“パスマントリー”です。パスマントリーにおける初期のタッセルは、まだ房の形態を持たず木の芯に数色の糸を巻いた珠飾りが特徴でした。今に至っては、コードの撚り合わせ方をはじめ、ブレードの編み方や糸で巻き珠に模様を付けていく手法など、パスマントリーの高度な技術によって培われてきたのです。常々現代の手芸・カルチャーにおいて伝統・歴史と結び付けて、タッセルづくりをパスマントリーと表現したくなる所ですが、個人的にはパスマントリーの歴史を踏まえると、一意にパスマントリーをタッセルと安易に捉えてはならないと思っています。房飾り職人が組紐を作る手工芸術として培ってきたことに敬意をもちたいと思っています。タッセルを知れば知るほど強く肝に銘じておきたい点です。

タッセル・パスマントリー

飾り房にとってのパスマントリーは、掛け紐づくり、首元を飾るラフ(えり飾り)、装飾を凝らしたフリンジ、ネッティング(網細工)、フィニアル装飾(頂華飾り)、巻き珠タッセルなどなど、今でも変わらない古典的な手法からできるものがあります。当時のパスマントリーは、房飾り職人どうしが装飾技術を競い合ってきたことで生まれた文化です。そういった古典的な手法の中の“攻め”の部分に着目した現代のパスマントリーを考えています。

糸紋の起伏で立体的な意匠をつくる

小さな飾り房に見だす美しさや、フォルムに糸の束ね目や編み目を浮き出させたり、スカートを掛け格子に編んだりするなど、糸紋の起伏をつくり立体的な意匠とするタッセルパスマントリーです。