ランプシェードを象ったアバジュールの形

アバジュール(仏:abat-jour)は“ランプシェード”という意味です。ランプシェードの傘の部分を布で仕立てる工芸技法の総称として呼ばれています。アバジュールは耐熱プラスティックシートにファブリックを張って、シェードの骨組みに組立てるもので、布を通じて光源からの明かりを透過させるため、カルトンを用いてランプシェードの傘を作るわけではありません。

アバジュール
MARIE CLAIRE MAISON

本来の領域はインテリア照明デザインになるのですが、ホビーやカルチャーとして取り扱う部分は、照明器具や部材を除いた傘づくりだけです。フレンチテイストで呼ぶ“アバジュール”という魅力を表したものだと感じます。

アバジュール形の魅力

カルトナージュから見たアバジュールの魅力は、柔らな曲線でスカラップに広がるシェイプや、スマートな筒になったチューリップ型のシェイプ等、二次曲線を持った特有の形に立体を作っていることです。アバジュールに使う芯材は、透過する薄く柔らかいシートのため、針金で湾曲した骨組みを作り張り込むことができます。しかし、カルトナージュの芯材は厚紙です。アバジュールの形を正確に製図することができたなら、カルトナージュで直円錐や角錐、斜円錐といった難しいフォルムを応用することができるようになります。

アバジュールの形と製図

アバジュールのシェードは、柱体、錐体、曲体を中心とした形が特徴です。ヨーロピアン様式のランプシェードは、骨組に帆布して筒状にする手法ですから、アバジュールの典型は、円錐形であるコニック(conique)と、円筒形のアメリケン(americain)が代表的な形です。

ランプシェードの傘の形をカルトナージュで仕立てる方も随分と多いのではないかと思います。カルトナージュでシェードそのものを作ることがあるようですが、形を上向きで用いて箱や器皿に実用するとカルトナージュの形としても魅力的になると思います。アバジュールとカルトナージュは異なる工芸ですが、カルトナージュに応用できる形を考えてみようということです。

円柱、円錐、角柱、角錐は容易に仕立てられる形ですが、曲錐は、裾が湾曲して広がる形態です。ランプシェードでは多角形になるほど曲線のシルエットが強調されるシェイプです。このような形は型紙から作ればそれなりの形になるのですが定型で作るとなると製図が必要です。

ベル型のランプシェードを模した試作モデル