Philosophy of Tassel

現代に紡ぐ飾り房の歴史・意味

タッセルの主な素材に糸が用いられていますが、皮や植物、獣毛、羽、木、紙、石、金属、ガラス玉等、房に束ねられる素材は多種に及びます。房にする方法には“撚る・巻く・束ねる・編む”等して作っていくのですが、歴史上そこには撚り紐や組紐、飾り紐を作る“パスマントリー”という伝統的な専門手法が存在し、中世ヨーロッパの女性が家内工芸として嗜む自由で優雅なエッセンスを内包しています。意匠においては、素材の違いや色糸の組み合わせによって、複雑で華やかな美術品として創りだしていけるところに奥深い面白さがあり、実用品のみならず装飾品として鑑賞に値するものまで、その美しさは豊かな現代生活の彩りを広げて魅せてくれます。

タッセルの原点は“鉤”(かぎ)

タッセル=Tasselの語は、「とうもろこしの房毛」と比喩されるように、そのような房状のものを模して生糸や紐で組んで束ね房状にしたものをタッセルと形容されています。タッセルの語源はラテン語の"tassa"を原語にした"Tasseau”であるとされ、"Tasseau"とは12世紀頃の中世女性の典礼服ブリオウ(Bliaud)という襟ぐりの深い胴衣の胸元を留めるために、金メッキをした長方形の金属プレートに宝石細工を施しステープル留めした金具でした。最愛の人の胸元を飾るために贈っていたようで16世紀の終わり頃まで使われていたそうで後のコルセットの原型ともされているものです。

"Tasseau"を訳せば、古来の装束などの紐で束ねる結び方になる“鉤”(かぎ)と訳せるでしょう。鉤とは現代でいうホック(hook)のことで、古来衣装の襟や袖を引き寄せる留め具として使われていたことから、巻き付く、からめつく、掛ける、引き締める、といったタッセルの用い方の自然な発意に基づくものと考えられます。"Tasseau"というタッセルの語源からは、現代のような房飾りを想像することはできませんが、12世紀頃から15世紀頃にかけて房飾りの意味をふくむようになったとされます。