タッセル&カルトナージュ
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初版第一版公開2009.9.02
新版第二版公開2011.8.22





VANITY

VANITY:バニティとは化粧箱のことです。別称コスメティック・ケースとも呼ばれ、その形態には多様な工夫が施され、実用品として人気を集めるファッションアイテムとしてのスタイルになっています。バニティの歴史はアールデコの装飾美術を原点にして、バニティという言葉は”虚飾””虚栄心”という意味があるなど、当時のヨーロッパ女性が社交場において持ち歩いたことから装身具化していった歴史があります。
バニティを初めてカルトナージュのモチーフにしたことにより、カルトナージュのスタイルに一つ魅力的なカテゴリーとして明確に位置づけられるようになりました。

バニティ・スタイル

バニティ・スタイルを定義すれば、「カルトナージュで作る化粧箱としての実用性と機能性を持ったボックス」といえるかもしれません。バニティ・スタイルの要件には、バニティとしてのスタイル、バニティの構造、バニティの素材感があげられるでしょう。バニティのスタイルには、ボックス、ケース、ポーチ、バッグという類型があり、カルトナージュとしてのバニティを持ち運ぶ大きさと実用性からくる構造の仕組みには、汚れ防止や防水性が好まれる部分があり、布地では材料として満たない要件になってしまいます。これらは基本的に踏まえておかなければならないのですが、やはり使う人からすると、便利さとして持ち手があるほうがいいのか、ファスナーで開くほうがいいのか、内装には仕切りやポケットがあったほうがいいのか等、様々な嗜好性があることを考慮しておくことが大切です。

バニティ・スタイルは、コーナーラウンドシェイプ

一目見て"これ化粧箱?”というスタイルなら、角丸形ボックスです。ボックスのコーナーがラウンドした箱ですが、これがフォルムのみならず内装においても化粧品を収納した場合にデッドスペースを生みにくい形にもなっているわけです。コーナーラウンドシェイプは、各角がある半径を持った形です。四角形のようですが、構造上はサークルと同じ構造を持ちます。つまり、同側面が一体で箱に形づくられるため、サークルと同じ組み立て方をするのです。また、深い胴、高さのある蓋、身蓋の組み合わせが、このスタイルのテクニカル・ポイントになっています。また、バニティ・ボックスの構造上の強度に応じて、カルトンの種類を使い分けたり、胴の深いコーナーラウンドシェイプの巻き方には、薄いカルトンボワをニ重に巻くダブルカルトンの手法を使うほか、一昼夜フォルム形成のクセをつけたりと、カルトンへの仕込みが重要です。

Nカット
ラウンドのポジション
クセつけ



インテリア(内装)のラミネーティング

ラミネートの手法を使ったことも、バニティの重要なスタイル定義になっています。使う人からすれば、化粧品による内装の汚れは必ずおこります。ましてや、布箱ですから汚れたら洗うことができないのがカルトナージュです。そこで、元からビニールコーティングした素材を使うことよりも、好きなクロスをラミネート仕上げでトリムするものです。市販のラミネート素材を使ってアイロンで熱圧着するだけですが、コツさえ覚えれば十分カルトナージュで使えるラミネート生地になります。このバニティで使用したクロスは、リバティーUKですが、綿ローンの薄さとUKの張りのある生地が上手くマッチしてきます。

ラミネート処理
縁回りの処理
インテリア・クッショントリム


カルトナージュで重要なことは、ビニールコーティング素材の接着です。カルトナージュに使う接着剤の基本は、酢酸ビニル樹脂エマルジョンですが、ビニールコーティングとなると、そうもいきません。ビニコすると、コーナーや重ね、折りしろ、巻きしろがビニールどうしになりますので、両面ともツルツルした上に、PVC特有の表面可塑への対抗ができないと剥がれてしまうのです。そこで、家庭用接着剤としてビニール接着剤が販売されていますが、多くは溶解接着させる「塩化ビニル樹脂溶剤」です。溶剤系というと、カルトナージュでは使用するのを避けたいところです。特に外装のくるみにおいて、溶剤の臭いはいやなものです。そうすると、その接着剤は何を使えばいいのか?ということになります。そこで一歩踏み込んだ専用接着剤がアクリル樹脂エマルジョンです。同じ水溶性の溶液型で、通常のカルトナージュの専用糊と同じ乳白をしています。乾燥後は、軟質の透明皮膜になりますが、アクリル成分を主とするぶんアクリル臭が強くなります。大変よく接着する成分ですが必要最小限で使うようにするとよいでしょう。


バニティ・ヒンジ

バニティの構造はボックスです。従って、身と蓋の組み合わせが構造上大きなウエイトをしめます。バニティ・ボックスの基本構造は、身蓋の開閉とロックが要件です。身蓋は印籠式の合わせにより、外観上スマートなボックスシルエットを作ります。さらに、身蓋が分離しない一体成形である必要があるため、身蓋はヒンジで開閉と接合を機能化させなければなりません。一般に印籠式の身蓋は、内装に仕込む継手によって、ある程度は身蓋が抜けない構造になり、その分、蓋に高さが生じます。つまり、二つの箱を、印籠式でありながらヒンジで繋ぐためには、印籠式の継手とヒンジの設計を独自なものにする必要があるのです。上写真は、シークレットだったカルトンのヒンジ構造です。このカルトンモデルによって、独自の構造として成立するか、製作プロセスとしてどの段階でアセンブリーするのか、開閉頻度による耐久などを検証することが大切なのです。

ヒンジアセンブリー部分
ボックスヒンジの固定
バニティヒンジ



バニティ・ロック(留め具)

鍵つきの箱というだけで、カルトナージュが一段と魅力に見えるものですね。その分、鍵の付け方、掛け方、そこに使うパーツやアセンブリーまで、気が抜けない製作プロセスになることはいうまでもありません。アセンブリーが多いということは、そのパーツをどこのどの段階で組み合わせておかなければならないかを、設計手順として詳細に計画しなければならないのです。このバニティで使用しているロック・パーツは、アクセサリー用パーツを流用したものです。元々チェーンを付けるホールが付いていることを利用して、小さな五連タッセルを、丸カンを利用したヘッドでアセンブルした手の込んだ装飾になっています。留め具は、カルトナージュのスタイルと合わせて考えなければなりませんから、何でもというわけではなく、素材と出会ったときがアイデアを出す勝負の瞬間です。

タッセルのマテリアル
留め具
差し込み



その他、テクニックの魅力がつまったバニティ

他に、このページでは紹介しきれないほどのパートがあります。見ておわかりかもしれませんが、外装クロスが、身蓋で柄合わせされていることや、蓋のトップをフィックスラウンドさせ、ふっくら天井になっていること。また、ワンボックスでありながら、2層式のトレーが取り外しできるほか、内蓋には、ミラーを装着するなど細かなパートを製作の中から積みあげています。もちろん、持ち運ぶ化粧品アイテムの種類や点数を考慮した内装設計になっていることはいうまでもありません。これがタッセル&カルトナージュのバニティです。



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